品質管理読了時間 12 分
ISO 9001の記録:実施したことを示すには
作業を正しく行っていても、記録が見つからなければ監査で説明できません。必要な証拠、保管の責任、最新版の管理を整理します。
01文書と記録の違い
| 文書化した情報(維持) | 文書化した情報(保持) | |
|---|---|---|
| 通称 | 文書 | 記録 |
| 性格 | どうやるかを定めるもの | 実際にやったことを示すもの |
| 改訂するか | する。版管理が要る | しない。増えていくだけ |
| 例 | 手順書、作業標準書、図面 | 検査記録、教育の受講記録、監査報告書 |
02ISO 9001で残す記録
- 監視・測定機器の校正/検証の記録(7.1.5.2)
- 力量を裏づける証拠(7.2)
- 製品・サービスに関する要求事項のレビュー結果(8.2.3.2)
- 設計・開発のインプット、管理、アウトプット、変更の記録(8.3)
- 外部提供者の評価・選定・パフォーマンス監視(8.4.1)
- 製品リリースの証拠と、リリースを承認した者(8.6)
- 不向く場面なアウトプットの処置、特別採用の記録(8.7.2)
- 監視・測定の結果、内部監査、マネジメントレビュー(9.x)
- 不向く場面と是正処置の性格および結果(10.2.2)
03IATF 16949で増える要求
| 項目 | IATF の追加要求 |
|---|---|
| 製品安全 | 文書化したプロセスが必要。安全部品の特別管理と、担当者の承認を含む |
| コントロールプラン | 試作・量産準備・量産の 3 段階すべてに必要で、PFMEA・作業標準書と整合していること |
| MSA | すべての測定システムに測定システム解析(GRR など)が必要 |
| SPC | 特殊特性には工程能力調査と継続的な監視が必要 |
| PPAP | 新規部品と変更部品は提出して客先承認を得ること |
| 組込みソフトウェア | ソフトウェア開発能力の自己評価が必要 |
| 記録の保存 | 量産部品の記録は、生産終了後 1 年に暦年 1 年を加えた期間まで保存 |
| 工場レイアウト | 物流、スペース利用、同期流れの観点で評価すること |
| 全寸法検査 | 客先が指定する周期で実施し、記録を保持すること |
自動車関連の現場では、APQP、FMEA、MSA、SPC、PPAPを別々の帳票として扱えません。監査ではPFMEA、コントロールプラン、作業標準のつながりを確認します。重要特性が一方にしかない場合は、その理由を説明する必要があります。
04監査で見つかる不備
| 不向く場面 | 根本原因 |
|---|---|
| コントロールプランと作業標準書が食い違う | 片方だけ直して、もう片方を直していない |
| 校正期限切れのゲージがまだ使われている | 期限到来を知らせる仕組みがない |
| 是正処置の有効性を検証していない | 対策を書いただけで完了にしている |
| 変更管理を通さずに変更している | 現場が「ついでに直した」 |
| 現場の図面の版がシステムと違う | 紙図面を回収する仕組みがない |
| 教育の有効性評価がない | 受講記録しかない |
| 供給者評価が形骸化している | 毎年同じものを写している |
05使える記録の残し方
- 監査のために別の文書一式を作らないこと。日常で本当に使っている帳票に、署名・日付・版を足せば足ります。
- 版管理はまず図面から。いちばん問題が起き、影響も大きい項目です。
- 記録を電子化すること。紙の最大の問題は保存ではなく、探せないことです。
- 完全さより整合性。3 つの文書が食い違っているほうが、1 つ足りないことよりはるかに重い指摘です。