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幾何公差の読み方:まずデータムを確認する
軸の直径が公差内でも、曲がっていれば相手の穴に入りません。寸法だけでは分からない形状や位置を指定するのが幾何公差です。最初にデータムを確認すると、どの基準で検査するかが見えてきます。
01寸法公差だけでは足りない理由
軸の直径を二点測定すると、どこも Ø20 h7 の範囲内。それでも軸全体が曲がっていれば、相手の穴に入らないことがあります。寸法測定で分かるのは対向する二点間の距離であり、軸の真直度や面の直角度、穴の位置までは分かりません。
そこで使うのが幾何公差です。形体の形状、データムに対する姿勢と位置、回転時の振れを指定します。ISO 1101 と ASME Y14.5 は記号が似ていても、既定の解釈が異なる場合があります。図面に指定された規格を先に確認しましょう。
02公差記入枠の読み方
公差記入枠は左から読みます。各区画が示す情報は次のとおりです。
| 区画 | 内容 | 何に答えるか |
|---|---|---|
| 1 番目 | 幾何特性記号 | 何を管理するか |
| 2 番目 | 公差値(Ø や付加記号が付くことも) | 許容値と公差域の形 |
| 3 番目以降 | データム文字(1〜3 個) | どの基準で測るか |
Ø の有無で公差域が変わる
位置度の「0.1」と「Ø0.1」は別の指示です。Ø がなければ公差域は間隔 0.1 の二平面、Ø があれば直径 0.1 の円筒になります。穴の軸があらゆる径方向にずれ得るなら、通常は円筒状の公差域を指定します。
数値のあとに付く付加記号
| 記号 | 名称 | 意味 |
|---|---|---|
| Ⓜ | 最大実体公差手段 MMR | 最大実体寸法から離れた分、ボーナス公差を得られる場合がある |
| Ⓛ | 最小実体公差手段 LMR | 最小実体寸法から離れた分、ボーナス公差を得られる場合がある |
| Ⓕ | 自由状態 | 非剛性部品を外力のかからない状態で測定する |
| Ⓟ | 突出公差域 | 公差域を部品の外へ延長し、ボルト締結後の干渉を管理する |
| Ⓔ | 包絡の要求 | 寸法と形状をあわせて考える(ISO では明示が必要) |
03幾何特性の 4 分類
代表的な幾何特性は、形状・姿勢・位置・振れに分けて考えると整理しやすくなります。まず、データムが必要かを確認しましょう。
| 分類 | 記号と名称 | データム |
|---|---|---|
| 形状公差 | 真直度、平面度、真円度、円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度 | 不要(輪郭度はどちらもあり) |
| 姿勢公差 | 平行度、直角度、傾斜度 | 必要 |
| 位置公差 | 位置度、同心度/同軸度、対称度 | 必要 |
| 振れ公差 | 円周振れ、全振れ | 必要 |
形状:形体そのものを見る
真直度、平面度、真円度、円筒度は、形体を理想形状と比べる指示です。円筒度は一つの断面だけでなく、円筒面全体を管理します。通常、ほかの形体を基準にする必要はありません。
姿勢と位置:基準との関係を見る
平行度・直角度・傾斜度はデータムに対する向きを、位置度はデータム系に対する位置を指定します。位置度の理想位置は、四角で囲んだ理論的に正確な寸法(TED)から決まります。許容できるずれは、位置度の指示で与えます。
振れ:回転させて測る
円周振れは、データム軸を基準に部品を回し、一つの断面で指示計の変動を読みます。全振れは測定位置を面全体に移しながら評価します。いずれも形状誤差と偏心の影響を含み、回転部品の組付け状態を考えるうえで役立ちます。
04データムの順序と段取り
データム A・B・C は単なる一覧ではありません。第一、第二、第三の順に基準座標系を定め、検査時に部品をどう位置決めするかに関わります。
- 第一データムは最初の基準です。安定した取付面を使う 3-2-1 の例では、3 点で 3 つの自由度を拘束します。
- 第二データムは残る自由度のうち 2 つを拘束します。3-2-1 の例では 2 点で受けます。
- 第三データムで最後の 1 自由度を拘束します。
3-2-1 は段取りをイメージするための基本形です。実際のデータムシミュレータは形体や適用規格によって変わります。A|B|C と B|A|C では基準座標系が変わり、測定値も変わり得ます。
05測定方法の選び方
測定方法は、指定された幾何特性とデータム系を再現できるかで選びます。
| 特性 | よくある測定方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 平面度 | 定盤+ダイヤルゲージ、オプチカルフラット、CMM 走査 | 測定点が粗いと誤差を小さく見積もってしまう |
| 真円度 | 真円度測定機(回転軸)、V ブロック+ダイヤルゲージ | V ブロック法は奇数山の形状で値が狂う |
| 平行度/直角度 | スコヤ+ダイヤルゲージ、CMM | 先にデータム面を確立する必要がある |
| 位置度 | CMM、機能ゲージ(通りゲージ) | Ⓜ が付いていれば機能ゲージがいちばん素直 |
| 円周振れ | 両センタ+ダイヤルゲージ | データム軸の据え方で結果が大きく変わる |
06よくある 3 つの誤り
- 形状の要求を姿勢だけで示す。平行度は平面度も制限しますが、機能上必要なのが平面度なら、その要求を明示します。
- 不安定な面をデータムにする。粗い鋳肌では位置決めが再現しにくいことがあります。組付け機能に関係し、安定して基準を作れる形体を選びます。
- 穴の位置度で Ø を見落とす。Ø がなければ二平面の公差域です。径方向の位置を管理したいなら、円筒状の公差域が意図されているか確認します。